たいてい全部ただの日。

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怒りのやり場

大学入試シーズンも終盤。 今年は入学定員管理厳格化などの影響もあり、特に私大文系を目指す受験生にとっては昨年よりもさらに厳しい状況が続いている。

 

SNSを覗いてみると、そこには狭き門から弾かれた受験生と思しきアカウントの絶望と怒りの声が飛び交っている。怒りは定員管理厳格化を各大学に求めている文科省にも向かい、中には国への報復を仄めかすツイートさえ見かける有様だ。

今年は国や大学だけでなく、私たちが世に送り出している情報媒体がやり玉に挙がることも多い。

パスナビに騙された

パスナビには嘘しか書いてない

パスナビは二度と信用しない 

すごい剣幕である。 「パスナビ」は小社が運営している大学情報サイトで、お陰様で大学受験界ではトップレベルと言っていいアクセスを持っている。螢雪時代の編集長としては、パスナビばかりが話題に上るのは正直複雑な心境ではあるのだが(笑)、いまの時代、特に「入試データ」と呼ばれるコンテンツの使い勝手については、ネットメディアに軍配が上がる部分があることは認めざるをえまい。

とはいえ、パスナビに掲載されているデータは、もとは螢雪時代螢雪時代臨時増刊に掲載しているデータを転用したもの。ここまで言われては、何がしかのコメントをしないわけにはいかない。

 

SNSでやり玉に挙がっているのは、おもに各大学(入試)の合格最低点や偏差値、センター試験得点率の合否ボーダーラインなど。今年、先に書いたような要因で特に上位・中堅私立大の合格最低点が上がり、螢雪時代やパスナビに掲載されている数値とは大きな差が出てしまったという事象が、「騙された」「嘘」と言われていることの内容だ。

いまさら言うまでもないことだが、パスナビにいま掲載されている合格最低点や難易度は、昨年(2018年)に実施された入試の結果を反映した数値だ。大学からのアンケート回答や大手予備校からご提供いただいたデータをもとにこれらを構成し、公開している。この数字が、今年の難易変動によっていささか参考にしづらいデータとなってしまったのは、編集部の人間としても残念に思う。

しかし、このことを「騙す」とか「嘘」といった言葉で表現するのは、事実に反している。

 

熱望した志望校の合格を掴めなかった受験生の心中は、察するに余りある。この結果を誰かのせいにしたい気持ちも、痛いほどわかる。私たちをサンドバッグにすることであなたの心に溜まった黒いものが少しでも晴れるなら、いくらでも叩いてもらってかまわない。ただ、独りの部屋で小誌の表紙に「嘘つき」と大書するのと、同じことをネットに書き込むのでは、行為の内容がまるで違う。事実に反する内容をネットを通じて世界に発信することは、いずれあなた自身を傷つけることにつながる。冒頭でも触れた「報復」のような内容は言うに及ばず。あなたの尊厳と未来を守るためにも、どうか自重してほしい。

 

「努力は人を裏切らない」という。ただ、それは努力が必ずあなたの望んだとおりの結果として返ってくるというだけの意味ではない。何かを努力し続けたことそれ自体、あるいは努力を通じて高みに達した魂が、意外な形であなたの人生に恵みを与えてくれるということ。それが、「努力は人を裏切らない」という言葉のもう一つの、大事な意味だと思う。

 

あともう少し。受験生のみなさんが心を落ち着けて、納得のいく春を迎えられることを、心の底から祈っている。