たいてい全部ただの日。

雨の日もとか風の日もとかいちいち言わないブログ。

Hoaxes never dieなのか?

私の娘が13歳の誕生日を迎えた節目に、ついにスマートフォンデビューすることになった。

いまを生きる子どもたちにとって、スマートフォンはいまのところ欠かすことのできないツールであるし、正しい知識を持ってぜひ使いこなしてほしいとは思っているものの、一方でさまざまなリスクの入り口を秘めた存在であることもまた事実。

 

ネットデマのいなし方やらSNSとの付き合い方やら、語り合わなきゃならんことが山ほどあるなあ…と頭を痛めていた矢先、自分のFacebookに一本のシェアが流れ込んできた。

 

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ハーバード大学

図書館の壁に書いてある言葉が

熱い!

1. 今居眠りすれば、あなたは夢をみる。今学習すれば、あなたは夢が叶う。

Sleep now and a dream will come out; Study now and a dream will come true

2. あなたが無駄にした今日はどれだけの人が願っても叶わなかった未来である。

Today you wasted is tomorrow loser wanted.

3. 物事に取りかかるべき一番早い時は、あなたが「遅かった」と感じた瞬間である。

The earliest moment is when you think it's too late.

4. 今日やるほうが、明日やるよりも何倍も良い。

Better do it today than tomorrow.

5. 勉強の苦しみは一瞬のものだが、勉強しなかった苦しみは一生続く。

The pain of study is temporary; the pain of not study is lifelong.

6. 勉強するのに足りないのは時間ではない。努力だ。

You never lack time to study; you just lack the efforts.

7. 幸福には順位はないが、成功には順位がある。

There might not be a ranking of happiness but there is surely a
ranking of success.

8. 学習は人生の全てではないが、人生の一部として続くものである。

Studying is just one little part of your life; loosing it leads to
loosing the whole life.

9. 苦しみが避けられないのであれば、むしろそれを楽しめ。

Enjoy the pain if it's inevitable.

10. 人より早く起き、人より努力して、初めて成功の味を真に噛みしめる事ができる。

Waking up earlier and working out harder is the way to success.

11. 怠惰な人が成功する事は決してない、真に成功を収める者は徹底した自己管理と
忍耐力を備えた者である。

Nobody succeeds easily without complete self-control and strong perseverance.

12. 時間は、一瞬で過ぎていく。

Time passes by.

13. 今の涎は将来の涙となる。

Today's slaver will drain into tomorrow's tear.

14. 犬の様に学び、紳士の様に遊べ.

Study like a Dog; Play like a gentleman.

15. 今日歩くのを止めれば、明日からは走るしかない。

Stop walking today and you'll have to run tomorrow.

16.一番現実的な人は、自分の未来に投資する。

A true realist is one who invests in future.

17. 教育の優劣が収入の優劣。

Education equals to income.

18. 過ぎ去った今日は二度と帰ってこない。

Today never comes back.

19. 今この瞬間も相手は読書をして力を身につけている。

Even at this very moment your competitors keep reading.

20. 苦しんでこそはじめて進める。

No pain, No gain.

 

生きとったんかワレ!!! と思わず叫びそうになってしまった。

ご存知ない方のためにいちおうメモっておくと、これは2011年から2012年にかけて、当時のいわゆる「意識高い系」の人々の間で盛んに流布された記事だが、ネタ元は中国のネットコミュニティ発のつくり話で、2012年にはハーバード大学の公式サイトがそうした掲示物は学内に存在しないことを明言している。ちなみに、上の記事では特に言及がないが、トップに貼られている写真には当時、「ハーバード大学図書館、朝4時の風景」というキャプションが付けられていた。しかし、ハーバードの図書館は朝4時に開館していないそうだ。(ちゃんと確認したわけではないが、そもそもハーバードの図書館にこんな部屋ないよというツッコミもよく見かけた)

このあたりは、下記の記事にくわしい。

hagex.hatenadiary.jp

 

当時、上のような検証記事が公開されたり、大学当局が公式に否定したりしたあとも、「たとえデマであっても正しいことを言っているんだから良いじゃないか」といった反論をしばしば見かけた。

もちろん、こういう格言が人生の指針になる人もいるのだろう。そこは否定しない。ただ、個人的には学習者のセルフマネジメントのあり方として、また学問のあり方としてもあまり良いことが書いてあるとは思えないし、全体的に“他者との競争”が強く意識され、学習を食うか食われるかの社会を生き延びる術のように語っているこの“格言”、ハーバードをはじめ欧米の多くの大学が教育の基礎に置いているリベラルアーツの精神とあまりにかけ離れていないだろうか。そういう内容の文章を「ハーバードの」とパッケージングして流布することがいちばんの問題なのだ。

 

東日本大震災以来、ネットデマをサーチ・アンド・デストロイするのが生きがいのようになってしまった私。ときには「めんどくさい親父だと思われてるんだろうな〜」とわが身を振り返り、枕を涙で濡らすこともある。(後半は嘘)

 

しかし、ここはちょっとマジメに語らせてほしいのだけれど、デマには人の命を奪う力がある。関東大震災の混乱の中で起こった朝鮮人虐殺は言うに及ばず。東日本大震災のときだって、福島第一原発からの放射能の恐怖を煽るデマがなければ、被災地の人々が自らの命を断つ悲劇はいくらか防げたんではなかろうかと思う。

ハーバードのデマが人の命に関わるような事態を引き起こすとはあまり思わないけれど、学問に対する歪んだ知識の拡散が、無数の指摘をかいくぐって6年以上も生き続けていたという事実は率直に言って怖い。ウソとホントが混じり合う世界に一歩ずつ踏み出していく娘の未来を守るには微力すぎるかもしれないけれど、やっぱりツッコミは入れ続けていかなきゃと思い直した、東日本大震災から間もなく7年を迎えるある日の出来事であった。